本稿の概要 |
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・中古住宅を購入してリノベーションする場合は、長所と短所を把握しておくことが大切 ・中古住宅のリノベーションには、住宅ローン審査などにおいて新築より不利な面がある ・中古住宅のリノベーションには、コスト節約などにおいて新築より有利な面がある |
昨今、若い世代を中心に新築にこだわらない方が増えています。その背景には《新築価格の高騰》や《中古住宅の購入とリノベーションをセットにした住宅取得方法の広がり》があるようです。
とは言え「中古物件購入+リノベーション」を選択するとなると、「魅力的だけど、デメリットも多そう」とか「入居までの手順が新築よりも複雑?」と不安になる方が少なくないでしょう。
そこで本稿では、新築住宅と比較した場合の《中古物件を購入してリノベーションするメリットとデメリット》を徹底解説します。しっかり情報収集をして、リスクを最小限に抑えましょう。
《中古物件購入+リノベーション》のデメリット
これから住宅を購入されるのであれば、中古物件が魅力的な選択肢のひとつとなるでしょう。購入と同時にリノベーションを実施すれば、あなた好みの住まいに生まれ変わらせることもできます。
しかし「中古物件購入+リノベーション」には注意点も存在します。とくに、初めてのリノベーションを経験される方は、見逃しがちなリスクに注意してください。
それでは、さっそく「中古物件購入+リノベーション」の代表的なデメリットを3つご紹介します。
- 建物自体の老朽化を完全に改善できない場合がある
- 住宅ローンの融資や減税で不利になる場合がある
- 入居まで手間と時間がかかる
それぞれ、詳しく解説していきます。本稿の情報を参考に、トラブルを回避するための対策を打ち、末永く安心して住める住宅を手に入れましょう。
建物自体の老朽化を完全に改善できない場合がある
リノベーションをして内装や設備を新しくすることで、見た目は《まるで新築》のようにできるでしょう。しかし、建物の老朽化に関しては、新築時の状態に戻すのは簡単ではありません。
▼建物の構造の老朽化に注意
とりわけ《築年数の古い戸建て》は、耐震性に問題が生じているケースがなくないでしょう。そのような建物に耐震補強工事をすることは可能ですが、じゅうぶんに改善できない場合があります。
柱や梁などの構造の劣化が進んでいたり、シロアリの被害が想像以上に深刻だったりする場合、リノベーションよりも建て替えを検討したほうがよいケースもあります。
マンションに至っては、個人(区分所有者)では建物の構造に関わる工事ができません。マンションの構造部分は住人の共有物であり、不具合は管理組合を通じて修繕する必要があります。
▼目視できない配管や配線に注意
中古住宅は、目に見えない部分の老朽化も考慮しなければなりません。リノベーションにより表面上は新しく見えても、給排水管や電気配線などの老朽化が進んでいる可能性があります。
とくに、配管や配線が20年以上更新されていない建物は注意が必要です。問題なさそうに見えても、リノベーション時に更新しておくほうが安心でしょう。
古い配管や配線を再利用すると、住み始めてから水漏れや電気トラブルが発生し、再び大がかりな修繕工事が必要になります。一方、新築はそのような心配がありません。
▼必要に応じて住宅診断を実施しよう
建物の耐震性能を知るには、まず着工時期から推測する方法があります。1981年5月以前に建築確認申請を受けている建物は、旧耐震基準という古い耐震基準にもとづいて建築されている可能性が高いでしょう。
物件の購入前に、建築士等の専門家に設計図書(図面や仕様書など)を見てもらうのも有効です。購入したい物件の耐震性能に不安がある場合は、耐震補強工事をご検討ください。
住み始めてから耐震補強工事をおこなうのは、大変です。
建物の構造あるいは配管・配線などの目視できない部分は、一般の方では老朽化の判定が難しいでしょう。そんなときに利用したいのが、ホームインスペクション(住宅診断)です。
ホームインスペクションを実施すると《どのような改修工事がいつ頃必要になるか》の目安が分かります。中古住宅購入の可否や、リノベーションする範囲の選択にご活用いただけるでしょう。
東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」でも、中古住宅の購入やリノベーションのご相談を承っております。また、耐震補強が必要か迷ったときもお気軽にお尋ねください。
住宅ローンの融資や減税で不利になる場合がある
中古住宅は、住宅ローンの融資や減税において不利になる場合があります。
▼住宅ローンの審査や条件が厳しくなる
たとえば、築年数の古い中古住宅は、金融機関によっては住宅ローンの審査が厳しくなります。融資が承認されたとしても、借入限度額が低くなったり、返済期間が短くなったりする場合があります。
なぜなら、中古住宅は新築時より資産価値(担保価値)が低下するからです。築年数が古ければ古いほど、審査や融資上限額などの面で不利になるでしょう。
頭金が少ない方や、リノベーション費用も融資でまかなう予定の方は、借入可能な金額を確認しておきましょう。
▼住宅ローン減税の控除額や適用範囲が少なくなる
住宅ローン減税は、年末のローン残高の最大0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から控除してもらえる制度です。
住宅ローン減税も、中古住宅は新築住宅より不利になる場合があります。中古住宅は、新築住宅と比べて控除期間が短くなったり、控除額が少なくなったりする可能性があります。
控除期間は、以下のような差があります。
- 中古住宅:最大10年間
- 新築住宅・買取再販:最大13年間
控除額も、以下のように違います。
出典:国土交通省資料
他にも、現行の耐震基準に適合していない中古住宅は、住宅ローン控除を利用できません。ですから、先述のとおり1981年5月以前に確認申請を受けている物件は注意が必要です。
同規模であれば、新築住宅より中古住宅のほうが安価に購入できる傾向があります。しかし、住宅ローンの融資や減税の条件は、ご覧のとおり中古住宅のほうが不利になるケースが多いです。
ですから中古住宅を購入する際は、物件の耐震性能や必要なリノベーション費用などをチェックしたうえで、必ず金融機関に住宅ローンの融資条件を確認しましょう。
一人で調べるのがご不安な方は、私たちコンシェルジュにご相談ください。一緒に、ひとつずつチェックと確認を実施していきましょう。
入居まで手間と時間がかかる
中古住宅のリノベーションは、入居までに新築分譲住宅よりも手間と時間がかかる傾向があります。
新築住宅の場合は、すでに完成している物件を購入すれば、契約のあと最短1か月程度で入居できるでしょう。
契約から入居までの期間(土地探しや物件探しの時間は除く)の違いをご紹介します。
- 中古住宅のリノベーション:1~3か月程度
- 新築分譲住宅(既築):最短1か月程度
- 新築注文住宅:5~8か月程度
ちなみに、中古住宅を購入してリノベーションを実施する場合は、以下の手順を踏む必要があります。
- 物件探し
- リノベーション会社探し
- プランニング
- ローン契約
- 工事
- 引き渡し
プランニングや工事の工程は、リノベーションの内容によって期間が大きく変わります。こだわりの内装にする場合や、大規模な間取り変更をおこなう場合は、より多くの時間と手間が必要です。
一方、注文住宅と比較する場合は、時間も手間も少なくて済む可能性が高いでしょう。あまり時間がない方には、新築分譲住宅か、リノベーション済みの中古住宅をおすすめします。
《中古物件購入+リノベーション》のメリット
つづいて「中古物件購入+リノベーション」の代表的なメリットを4つご紹介しましょう。
- 物件の選択肢が広がる
- 好みの内装や設備、間取りにできる
- コストを抑えやすい
- 環境への負担を軽減できる
順番に、詳しく解説していきます。
物件の選択肢が広がる
中古住宅を購入してリノベーションするケースでは、新築住宅を購入するケースに比べて物件の選択肢を増やせる場合があります。
たとえば、新築分譲住宅は限られた物件の中から選ばざるをえません。希望するエリアや間取り、予算に合致する物件を見つけるのが難しく、妥協が必要になる場合もあるでしょう。
一方、中古住宅の流通数は、新築住宅よりも多い傾向にあります。不動産情報サイトで検索すると、多くの地域では新築住宅より中古住宅の方がたくさんヒットするでしょう。
中古住宅をリノベーションすれば、内装や間取りの条件が多少合わない物件であっても、自分の希望に合うようにつくり変えられます。さらに、中古住宅には、以下のメリットもあります。
- 希望するエリアや間取り、予算に近い物件が見つかる可能性が高くなる
- 人気のエリアや利便性の高い場所での選択肢も増える
- 物件を見つけやすく、物件探しの期間を短縮できる可能性がある
- 新築よりも価格が安い傾向にあるため、予算を抑えやすい
- 物件の価格が安くなる分、エリアの選択肢が広がる
新築か中古かで迷っておられる方は、まず希望エリアの物件や土地の流通数をチェックしてみるとよいでしょう。方針を考える際のヒントになります。
好みの内装や設備、間取りにできる
中古住宅を購入してリノベーションする場合、新築住宅を購入する場合に比べて自分の好みの内装や設備、間取りにしやすいでしょう。
▼リノベーションは《オーダーメード》
中古住宅のリノベーションは、いわば「オーダーメード」です。間取りや内装を、法令や建物の構造上の問題がない範囲でほぼ自由に変更できます (マンションの場合、専有部分のみ)。
たとえば、間仕切り壁を取り払って広々としたリビングにしたり、収納スペースを増やしたりできる可能性が高いでしょう。最新の設備を導入することで、快適性や機能性を向上させることも可能です。
施工業者の選択肢も増えます。中古住宅を購入してリノベーションする場合は、リフォーム専門業者も選択肢に入りますので、好みの業者を見つけやすいでしょう。
東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」でも、ご要望に合ったリノベーション工事の業者をご紹介できます。安心かつオシャレにリノベーションしたい方は、ぜひご相談ください。
▼分譲マンションや建売住宅は《レディーメード》
分譲マンションや建売住宅は、いわば「レディーメード」です。すでに間取りや内装が決まっていることが多いでしょう。
なぜなら、分譲マンションや建売住宅は販売を開始した時点で行政の建築許可審査が終わっているため、大きな設計変更のご要望に応えるのが難しいのです。
間取りをオプションから選択できる場合もありますが、選択肢が多くなかったり、オプション設定の期限が短かったりと、自由度はそう高いとは言えません。
ちなみに、注文住宅は「カスタムメード」に近い設計方法を採用している場合が多いでしょう。準備されている標準的なプランを、自分好みにカスタマイズできます。
コストを抑えやすい
一般的に、中古住宅を購入してリノベーションするほうが、新築住宅を購入するよりもコストを抑えやすい傾向にあります。
コストを抑えやすい理由は、物件購入費用が低いからです。中古住宅は新築住宅に比べて購入価格が安く、とりわけ築年数が経過した物件ではその傾向が顕著になります。
国土交通省が実施している『住宅市場動向調査 (令和4年度)』によると、住宅購入資金の平均値には以下のような差があります (注文住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏での調査)。
- 土地を購入した注文住宅新築世帯:平均5,436万円
- 建て替え世帯:平均4,487 万円
- 分譲戸建住宅:平均4,214万円
- 分譲集合住宅:平均5,279 万円
- 既存(中古)戸建住宅:平均3,340万円
- 既存(中古)集合住宅:平均2,941万円
リノベーションコストも、柔軟に調整できます。必要な部分だけを改修できますので、予算に応じた工事が可能です。
ただし、中古住宅のリノベーションでは、床・壁・天井をめくってみて初めて不具合に気づくケースがあります。万が一、そのような不具合が見つかると、想定外の費用が必要になります。
たとえば、以下のようなケースでは、ご予算が大きくアップしてしまうでしょう。
- 耐震改修が必要になった
- 深刻なシロアリ被害が見つかった
- 配管の劣化が見つかった
- 水漏れ・雨漏れが見つかった
- 図面と実際の間取り・構造に違いがあった
このようなコストの発生を防ぐには、図面や現地確認でしっかりと建物の状態をチェックすることが重要です。
環境への負担を軽減できる
近年、地球温暖化により夏の猛暑が激甚化しています。温暖化を抑制するには温室効果ガスの削減が必須で、そのために化石燃料由来のエネルギーの消費を減らす必要があります。
中古住宅を購入してリノベーションすることは、新築住宅を購入する場合に比べて《環境への負荷を軽減する効果》があります。
▼新築住宅を建てる場合の環境負荷
新築住宅を建てる場合、多くの資源やエネルギーを消費します。資材の製造時や輸送時、そして建築時に大量のエネルギーを消費するのです。
温室効果ガスの約9割は、エネルギー由来の二酸化炭素が占めています。日本のエネルギー構造は化石燃料に大きく依存しているため、エネルギー消費が地球温暖化に直結します。
▼中古住宅をリノベーションする場合の環境負荷
一方、中古住宅をリノベーションすると、新築住宅を建築する場合より温室効果ガスの排出量を大幅に削減できます。
なぜなら、既存の構造や素材を利用するため、生産時のエネルギー消費や、廃棄物の発生を大幅に減らせるからです。新築する場合に比べて、資源やエネルギーの消費を抑えられます。
「中古住宅の購入+リノベーション」は、環境に優しい選択肢です。環境への負担を減らしたい方は、中古住宅を購入して、リノベーションを実施されてみてはいかがでしょうか?
まとめ:中古物件購入やリノベーションのご相談はコンシェルジュへ
「日本人は住宅の新築信仰が根強い」と言われています。しかし、近年では新築にこだわらない方が増え、首都圏のマンションの流通では2018年に中古が新築を追い抜きました。
この流れを受けて、建築会社もリノベーションに関連するサービスを充実させています。さまざまな面で「中古住宅の購入+リノベーション」を選択しやすい環境が整ってきたと言えるでしょう。
とは言え、一般の方にとって「中古住宅の購入+リノベーション」は難解な作業の連続ではないでしょうか?「いくらかかるの?」「どう進めたらいいの?」と不安を感じる方もおられるでしょう。
そんなときは、ぜひ東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」にご相談ください。資金計画のご相談や物件探し、そしてリフォーム会社選びなど、トータルでお手伝いさせていただきます。