最近は、ご自宅で仕事をする機会が増えたという方も多いのではないでしょうか。私もその1人ですが、実際に自宅で長時間または長期にわたって仕事をしてみると、作業スペースの確保やその快適性についてアレやコレやと思うことが出てきませんか?
また、仕事以外にも趣味に没頭できるコンパクトなスペースを設けたい、といったニーズも近年増えてきています。そんなご要望に合わせて、書斎よりももっとコンパクトなワーキングスペースを家の中に作ることを建築の専門的な視点から今回は考えてみたいと思います。
オープン型orクローズ型 どちらが適している?
自宅で仕事をする場合でも、従来はリビングの一角や洋室などにパソコンを置いたり書類を広げたりして作業するオープン型ワーキングスペースのニーズが多くありました。
しかし、最近はWeb会議というコミュニケーション手段が追加されたことや、個人情報・機密情報の取り扱いが厳しくなり、閉鎖された空間が好まれるようになってきました。
とはいえ、全ての方や全ての間取りにクローズ型が適しているとは言い切れず、例えば小さなお子さまが傍にいる中で仕事をする場合には、クローズ型の空間では目が行き届きにくくなってしまい、むしろオープン型の方が適しているかもしれません。
また仕事とはいえ、1日中閉鎖された空間にいると気分的に沈んでしまったり、ストレスを感じやすくなってしまったりするという報告もあります。メリット・デメリットをしっかりと把握して、空間の使い方を検討していきましょう。
A.オープン型のワーキングスペース
オープン型の場合は、色々なパターンが考えられますが、おすすめは「収納」と「光」について考慮しておくことです。収納についてのポイントは、仕事や作業に使う機器や書類をまとめて1か所に収納できるスペースを確保することです。プライベートで使用する物と置き場を区別することでON・OFFの切り替えがしやすくなりますよ。
次に光についてですが、まず気を付けるポイントはパソコン使用時の画面への映り込みです。映り込みについては、リビングの設計時にテレビの配置においても気を付ける必要がありますが、同様にパソコンの画面にも太陽光による映り込みがあるとストレスを感じてしまいます。逆にパソコン作業ではなく、書類に向かう作業や手元で細かい作業などをする場合は、太陽光を有効利用できる配置にしておきたいですね。
そして、照明もワーキングスペースに適した位置に配置しましょう。視野に影ができないか、充分な明るさを確保できるか確認しましょう。
また、照明には何種類か色があります。作業に適するのは白く涼しげな「昼白色」系と言われていますが、リビングなどくつろぎの空間は暖かみのある「電球色」や「温白色」が好まれる傾向にあります。同じ空間の中で違う色の照明があると少しバランスが悪く見えてしまうかもしれません。配置場所や器具選びも考えておきたいですね。
B.クローズ型のワーキングスペース
コンパクトな執務空間として「書斎」や「DEN」という呼び方の空間が、新築モデルルームなどでも多く提案されています。個室とした場合、だいたい最低でも3畳程度の広さを確保することが多いようです。しかし「Web会議に対応するため、最低限の広さでよいので個室が欲しい」といったニーズも増えています。ペーパーレス化も進み、パソコン・机・椅子さえあれば良い、となった場合は2畳(約3.3㎡)もしくはそれ以下の広さでも良いのかもしれませんね。
注文住宅など最初から設計する場合は比較的計画しやすいですが、リフォームで今ある間取りの中で検討する場合は、色々と制約が出てしまいます。今までも、個人用の作業スペースを確保するために、クローゼットを改造してワーキングスペースを作りたい、といったご要望をいただくことがありました。
しかしコンパクトな空間にすることで、注意すべき点があります。
B-1.音について考慮する
狭い空間になると、音が反響しやすくなります。発生した音が床・壁・天井に当たって反射し、空間がコンパクトな分、短い時間で別の床・壁・天井に当たりまた反射する…、という仕組みです。反響しにくくするためには、一部の壁を吸音効果のある素材にすることで解消が期待されます。逆に吸音効果を高めすぎてしまうと、残響時間が短くなり不自然に感じられることもあるので注意しておきましょう。
B-2.空調について考慮する
間取りによっては窓のないワーキングスペースとなるでしょう。その場合、換気や空調への配慮が必要です。換気という面で言えば、充分な換気能力を持った換気扇を設置すれば問題ありません。しかし暑い夏・寒い冬を過ごす空間としては、エアコンを設置したいところですよね。
家電量販店などで見かけるエアコンで最もコンパクトな空間用は6畳用です。この6畳用を6畳未満のコンパクトな空間に設置するとセンサーが誤作動を起こしてしまい上手く機能しないという懸念があります。
現在、大手メーカーからコンパクトな空間に対応できるエアコンが発売されていますので、空間に合ったサイズの機種を選びましょう。なお、マルチエアコン式という他室の機器との兼ね合いが必要であったり、設置スペースは2畳以上など設置条件もあったりしますから事前に確認が必要です。
もし、換気扇やエアコンの設置が難しい場合は、壁の上部を天井まで達さずに30~40㎝開けることで隣室と空調を共有する、という方法もあります。しかしこの場合は音漏れや光漏れも起きてしまいますからメリット・デメリットを理解しておきましょう。
B-3.閉塞感を考慮する
コンパクトな空間にずっといるとどうしても閉塞感を感じてしまいます。なるべくそう感じないようにする工夫をしたいですね。色は目に優しい自然に近い色を用いること、棚や間接照明など横のラインを意識したアクセントを設け、目線を横に広げることなども、閉塞感を軽減させる方法です。
しかし感じ方は人によりさまざまです。普段から閉ざされた空間は苦手だ、という方にはクローズ型はおすすめできないかもしれません。
B-4.光を考慮する
「A.オープン型」でもお伝えした画面への映り込みや照明についても考慮しておきましょう。
自宅におけるワーキングスペースはこれから先、さまざまなニーズに合わせて、さまざまなスタイルで私たちの生活のスタンダードになっていくかもしれませんね。「今の住まいにワーキングスペースを作るとしたらどんなプランができそう?」「建て替えや住みかえも検討しようかな」など、お考えのことがございましたら是非コンシェルジュにご希望をお聞かせください。新たな日常に合わせた快適な空間づくりのお手伝いをさせていただきます。