高齢の親と同居するなら実家を建て替え?リフォーム?

高齢の親と同居するなら実家を建て替え?リフォーム?

本稿の概要
・実家を二世帯住宅に建て替えると、間取り等を刷新できるが、コストと時間がかかる
・実家を二世帯住宅にリフォームすると、コストと時間を節約できるが、刷新には限界がある
・実家を売却して二世帯住宅を購入すると、環境を改善できるが、手続きが煩雑になる

実家が《持ち家》の場合、高齢の親御さまと同居する際の選択肢は、おもに「二世帯住宅に建て替える、二世帯住宅にリフォームする」が考えられます。

それぞれ一長一短がありますので、ご家族の状況やニーズに応じて最適な方法を選ばねばなりません。では、建て替えやリフォームにはどんな長所と短所があるのでしょうか?

本稿では、高齢の親御さまと同居する観点から、それぞれのメリットとデメリットを解説します。ご実家の活用方針を決めたい方は、ぜひ最後までご覧いただき、ヒントにしてください。

実家を二世帯住宅に建て替える場合のメリットとデメリット

ご実家の建物を解体・撤去して、土地をいったん更地(建築物が何もない状態)に戻し、新たに家を新築することを《建て替え》と言います。

さて、ご実家を建て替える場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

建て替える場合のメリット



まずは、メリットからご紹介しましょう。

▼間取りや設備をゼロから設計できるので、家族全員の要望をかなえやすい



建て替えでは、間取りをゼロから新しく設計できます。リフォームのように既存の構造による制約を受けませんので、家事動線を最適化したり、必要な部屋数を確保したりすることが可能です。

じゅうぶんな敷地面積があれば、家族全員が快適に暮らせるように、二世帯住宅として設計することもできるでしょう。段差の解消や廊下幅の確保など、バリアフリー設計を取り入れるのも容易です。

以下のような最新の設備や技術も、導入しやすいです。

  • 高齢者でも安心して使えるユニットバス
  • 高齢者でも開閉が容易なドア(玄関・室内)
  • 調光や自動点灯ができる照明システム
  • IoT技術を活用したスマートホーム技術

また、建て替えなら最新の省エネ基準や耐震基準にもとづいて設計できます。地震や気候変動に対する安全性の高い住宅は、とりわけ高齢者にとっては安心して暮らせる大切な基盤となります。

「今の家を建て替えて、二世帯住宅にすることはできるのかな?」とお悩みの方は、東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」にご相談ください。

完全分離型の間取りにするのか、それとも玄関やキッチンなど一部を共有するのか ―― など、ご希望の内容によっても必要な敷地面積が変わってきます。

具体的にどんな広さの二世帯住宅が建つのか、私たちと一緒に検討してみませんか?


▼住宅ローンを利用した資金調達が容易にできる



住宅ローンを利用することで、自己資金が少なくても住宅を手に入れやすくなります。しかし、住宅ローンの融資限度額や審査通過率は、どのような住宅を取得されるのかによって変わります。

一般的に新築住宅は、リフォームした住宅や中古住宅に比べて資産価値が高く、担保価値も明確です。ですから、融資限度額や審査通過率は高くなる傾向があります

新築住宅は、住宅ローン減税でも中古住宅(買取再販住宅を除く)より、以下のように有利な面があります。

  • 控除期間が長い
  • 控除率が高い
  • 借入限度額が高い

建て替えは、住宅ローンを利用した資金調達が比較的容易で、長期的に見て税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

新居の取得費用を子世帯が負担する場合、有効な選択肢と言えるでしょう。

建て替える場合のデメリット



つづいて、建て替えのデメリットをご紹介します。

▼古家の解体費用や新居の建設費用など、高額の初期費用がかかる



古家を建て替える際には、まず既存の建物を解体する必要があります。その際の解体費用は、大きな負担となるでしょう。

新居の建設費用も高額です。同規模の中古住宅を購入したり、リフォームしたりするより、コストがかかる傾向があります。

さらに、建て替え期間中は仮住まいが必要になります。仮住まいが長期間にわたる場合、その費用も大きな出費となるでしょう。


このような総コストは、補助金や助成金を活用することで少しでも負担を軽減したいところです。必要な情報を集め、資金計画をしっかりと立てましょう。

東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、建て替えや資金計画のご相談を承っております。

建築や不動産の資格を持つコンシェルジュと、提携するファイナンシャルプランナーが、あなたのお悩みにアドバイスをさせていただきます。お気軽にご利用ください。


▼新居で暮らし始めるまでに多くの時間と手間がかかる



建て替えは解体工事が必要になるため、工事期間が長くなりがちです。4~7か月程度は見ておくほうがよいでしょう。

工事前には、工事を担当してもらう建築会社探しをしなければなりません。建築会社が決まったら、間取りを決めたり仕様を決めたり、何度も綿密な打ち合わせが必要です。

情報収集を始めてから新居での生活をスタートさせるまで、1年以上かかるケースも珍しくありません。しっかり、スケジュールを管理する必要があります。


建て替えには、工事関連の手続きや仮住まいの手配など、さまざまな作業が絡みます。

また、仮住まいを含む長丁場の新築工事は、高齢の親御さまの体調を考慮する必要があります。仮住まいや2度の引っ越しは、高齢者に体力的な負担を強いるでしょう。

ですから、可能な限りスムーズに進めたいところです。事前にしっかりと計画を立て、必要ならサポートやアドバイスを受けていただくことをおすすめします。

実家を二世帯住宅にリフォームする場合のメリットとデメリット

建て替えとリフォームの違いは「建物の骨組み(構造)部分を残すかどうか」にあります。建て替え工事は既存の骨組みを解体・撤去しますが、リフォーム工事では全部または一部を残して再利用します。

では、ご実家の一部を再利用してリフォームする場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

リフォームする場合のメリット



まずは、メリットからご紹介しましょう。

▼一般的にコストを低く抑えることが可能



リフォームは、既存の建物を活用するため、解体費用や工事費用を抑えられます。資金を出される方の経済的な負担を軽減しつつ、高齢者が快適に暮らせるように住環境を整えられます。

ご予算に合わせて工事箇所を限定できるため、比較的建築コストの調整もしやすいです。できるだけ低予算で同居するお住まいを取得したい方には、ご実家のリフォームがおすすめです。


ただし、工事規模が大きくなるほど既存部分の再利用が減るため、建て替えとの費用差が小さくなります。

条件しだいでは建て替えより手間がかかり高額になる場合もあるため、建て替えや、後述の住み替えとの比較検討が大切になります。

▼比較的短期間で完了できるため、親世帯の仮住まい期間を短くできる



リフォームは、一般的に建て替えよりも短期間で工事を完了できます。その結果、親世帯の仮住まいが必要な場合はその期間を短く抑えられます。

リフォームの工事期間は、工事の規模により幅があります。数日で終わる小規模の工事から、半年近くかかる大規模な工事までさまざまです。

大規模リフォームの場合は、おおよそ「2~5か月」が目安とお考えください。

一方、建て替えは解体工事が必要になるため、工事期間が長くなりがちです。4~7か月程度は見ておくほうがよいでしょう。

リフォームする場合のデメリット



つづいて、リフォームのデメリットをご紹介します。

▼望み通りの設計にできない可能性がある



リフォームでできることには、限界があります。とりわけ古い住宅の場合、構造的な制約から、望み通りのバリアフリーにできない可能性があります

たとえば、以下に注意が必要です。

  • 廊下の幅を広げられない場合がある
  • 段差を完全に解消できない場合がある

他にも、キッチンやお風呂などを増設できるのか?お部屋を増やせるのか?床面積が足りない場合は増築できるのか? ―― など、検討すべき課題が多岐にわたります。

一方、建て替えの場合はバリアフリーを考慮して設計できます。住み替えの場合も、バリアフリー住宅を探す、あるいはバリアフリーに改修しやすい住宅を探すことが可能です。


生活動線の大幅な改善も、難しいでしょう。たとえば、2階のベランダ。リフォームでは、位置を変更するケースはまれです。

一方、建て替えなら《1階にランドリースペースを設け、2階のベランダをなくすプラン》も検討できます。洗濯動線(洗う・干す・取り込む・たたむ)を大きく短縮できるでしょう。

リフォームでは、家族のニーズや予算を考慮しながら、どこまで改修するのかよく検討することが大切です。

▼再利用した部分は、近い将来更新が必要になる可能性が高い



リフォームでは、既存の構造や設備の一部を再利用します。しかし、古い設備や構造は性能や耐久性が劣化している場合が多く、近い将来更新が必要になる可能性が高いでしょう。

古い部分が残ることで、メンテナンスの負担が増える可能性もあります。たとえば、水まわりの設備を更新しない場合は、新品から10年を過ぎると故障が増え始め、修繕または交換が必要になります。

意外と見落としがちなのが、外壁と屋根です。塗装による防水性能を回復するために、10~15年程度の周期で塗り替えます。リフォーム時に手を付けない場合は、近い将来更新が必要になるでしょう。


更新のための工事が一時期に重なると、まとまった費用と工事期間、そして手間がかかります。リフォームを採用する際は、長期的な視点から改修箇所を決めることが大切です。

親御さまとの同居にともなうリフォームのことでお悩みがある方は、私たちコンシェルジュにご相談ください。リフォームの計画から施工してもらう会社選びまで、丁寧にフォローさせていただきます。

詳しくは、こちらをご覧ください。


ちなみに、2025年4月に改正建築基準法が施行され、リフォームに大きな影響を与えることをご存じでしょうか?法改正によって、ご希望のリフォーム内容がかなわなくなる可能性もあります。

リフォームをご検討中でしたら、ぜひこちらもあわせてご覧ください。


▼子から親への贈与と見なされる場合がある



親名義の住宅を子世帯がリフォームする際、子世帯がリフォーム費用を負担すると、その金額が親への贈与と見なされる可能性があります。

たとえば、1,500万円のリフォームを子世帯が負担した場合、110万円の基礎控除を差し引いた残りの1,390万円が贈与税の対象となります。

この解決策は、いくつかあります。親名義の住宅を子世帯がリフォームするご予定の方は、私たちコンシェルジュにご相談ください。あなたに合ったアドバイスをさせていただきます。

実家を売却して二世帯住宅に住み替えるという選択肢もある

新しい家を見つけて、引っ越しすることを《住み替え》と言います。つまり住み替えは、リフォームや建て替えと違い、住所が変わります。

では、住み替えをする場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

売却して住み替える場合のメリット



まずは、住み替えのメリットからご紹介しましょう。

▼ライフスタイルに合った住環境を選択できる



住み替えなら、バリアフリー住宅やエレベーター付きのマンションなど、高齢者にとって快適で安全な住環境を選べます。より容易に日常生活を送れるようになれば、生活の質が向上するでしょう。

また、交通の便や周辺の施設(医療機関、買い物施設、公園など)を改善する機会にもなります。利便性が高いエリアへ移住すれば、日常生活が今より快適になります。

ただし、新しい人間関係や地域のコミュニティに慣れる必要があり、それが精神的な負担になる恐れがあります。高齢の親御さまも交えて、暮らしやすい地域探しを進めることが大切です。

また、ご実家の敷地面積が限られる場合、建て替えやリフォームでは希望の広さを確保できないケースがあります。その場合は、住み替えを検討するのがおすすめです。

▼手元流動性(すぐに使える資金)を高められる可能性がある



実家を売却することで、まとまった売却益が得られるケースもあります。その売却益を新居の頭金に使わず、子世帯が住宅ローンを利用すれば、急な出費に対応するための資金を確保できるでしょう。

その資金は、たとえば親御さまの医療費や介護費、住居修繕費などに充てられます。《暦年課税にかかる基礎控除》を利用した贈与で、相続税対策をおこなうことも可能でしょう。


「なるべく住宅ローンの借入金を減らすために、可能な限り売却益を新居の頭金に充てる方がいいのでは?」と思いましたか?―― じつは、必ずしもそうとは限りません。

なぜなら、住宅ローンは他のローン商品に比べてとても金利が低いからです。売却益の全額を頭金にするより、全部または一部を手元に残しておくほうがいいケースもあるのです。

たとえば緊急性が高く、かつ高額な修繕が必要になった場合、手元資金がない方はこの費用をローンでまかなうことになります。

しかし、リフォームローンやフリーローンは高金利です。同じ借入なら、これらのローンより住宅ローンのほうがお得 ―― とも考えられます。

手元流動性に不安があるご家庭は、ご実家の売却を利用して手元資金をつくるのもひとつの方法です。

売却して住み替える場合のデメリット



最後に、住み替えのデメリットをご紹介しましょう。

▼長年住み慣れた場所を離れることになる



長年住み慣れた場所を離れることは、高齢者にとって大きなストレスとなり得ます。ご近所付き合いや地域コミュニティとのつながりが強い場合、その喪失感は小さくないでしょう。

新しい環境に適応するためには、周囲の人々との関係を再構築する必要があり、これが心身に負担をかける恐れがあります。その結果、生活の質が一時的に低下するかもしれません。

高齢者の生活の質を維持するには、住み替え先の環境や、家族や地域によるサポート体制の確認が不可欠です。

▼手続きが煩雑になる



住み替えでは、旧住居の売却と新住居の購入の両方をおこなうため、さまざまな手続きが必要になります。例をあげてみましょう。

  • 旧住居の売却:不動産業者との契約・査定・売買契約の締結・引渡しなどが必要
  • 新住居の購入:物件の選定・契約・ローンの手続き・登記などが必要

経済的な負担も、考慮が必要です。

売却が思うように進まない場合は、新住居の購入を先行して進めることになるでしょう。その際、旧住居が売却できるまで固定資産税や都市計画税、火災保険などの費用がかかり続けます。

売却益を新住居の頭金に充てる計画の場合は、売却が決まらないと新住居の購入を進められません。売却と購入を同時に進める方は、手続きの複雑さを考慮したうえで、計画的に進める必要があります。

住み替えをご検討中で、進め方にご不安がある方は、私たちコンシェルジュにご相談ください。どのタイミングで何をするべきか、丁寧にアドバイスさせていただきます。

まとめ:家族の状況やニーズに応じて最適な住まいを選ぼう

高齢の親御さまとの同居を考える際、実家が持ち家であればおもに3つの方法があります。二世帯住宅に建て替える方法、二世帯住宅にリフォームする方法、そして実家を売却して住み替える方法です。場合によっては、近居という選択肢もあるでしょう。

これらの方法の中からひとつを選ぶ際、実家の立地や建物の状態、将来の介護のしやすさなどが重要な判断材料となるでしょう。ご家族の人数や生活スタイル、ご予算なども影響します。

さまざまな因子を考慮して、ご家族でよく話し合いながら、状況に合った選択をしましょう。迷っている方は、東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」にご相談ください。

私たちコンシェルジュなら、中立の立場から、さまざまな選択肢をご提案できます。お客さまが思いついていない新たな選択肢も、ご提示できるかもしれません。

ぜひ、店舗相談やオンライン相談をご利用ください。


また、住宅資金の非課税制度も活用可能でしょう。選択肢によって適用の可否や限度額が変わりますので、それも考慮して方向性を決めるのがおすすめです。

住まいに関わる税のお悩みやご相談も、私たちコンシェルジュにご相談ください。提携する税理士と一緒に、あなたにピッタリの方法をご提案させていただきます。