二世帯住宅を賃貸に出す際のポイントや、メリット・デメリットを解説

二世帯住宅を賃貸に出す際のポイントや、メリット・デメリットを解説

本稿の概要
・二世帯住宅は3タイプあり、賃貸併用にするなら、それに適したタイプを選ぶ必要がある
・賃貸も考慮した二世帯住宅は、家賃を得られる反面、売却しづらい等のデメリットもある
・賃貸も考慮した二世帯住宅は、入居者や住宅ローン、相続に配慮して設計する必要がある

将来、同居を検討されている親子にとって、賃貸併用型の二世帯住宅は魅力的な選択肢です。空いているほうのスペースを賃貸に出すことで、家計やローン返済、そして相続の負担を軽減できます。

しかし、知識不足から一歩踏み出せない方も多いはず。二世帯住宅の設計や、入居者の対処方法など、疑問が尽きないですよね。どうすれば、二世帯住宅の賃貸運営を成功させられるのでしょうか?

ご安心ください。本稿では二世帯住宅の賃貸活用におけるポイントや、メリット・デメリットを詳しく解説します。あなたも、本稿を参考に賃貸併用型の二世帯住宅を運営してみませんか?

二世帯住宅を賃貸併用住宅にする際のポイント

さっそく、二世帯住宅を賃貸併用住宅にする際のポイントをご紹介しましょう。設計と住宅ローン、そして入居者対応の注意点について解説します。

《二世帯住宅の建築》と《賃貸併用への転用》をご検討中の方は、ぜひヒントにしてください。

建築・設計時の注意点は?


建築・設計時の注意点は?
まず、二世帯住宅には3つのタイプがあることを知っておきましょう。賃貸に向いているタイプと、向いていないタイプがあります。

賃貸併用にされるご予定でしたら、賃貸向きのタイプを選んでいただくとよいでしょう。3つのタイプをご紹介します。

完全共有型私室(寝室)以外のほぼすべての空間を共有。床面積を抑えられるため、建築コストを抑えられる。プライバシーの確保が難しいため、賃貸に不向き。
一部共有型世玄関や浴室、リビングなど、一部の空間を共有。そのまま賃貸に出すと、シェアハウスのようになってしまう。他人同士の家族が住むには、やや不適。
完全分離型帯ごとに居住空間を分離できるので、プライバシーを確保しやすく、賃貸に出しやすい。他のタイプと比べて建築コストが高くなる。土地の広さも必要。


賃貸に出すことを検討するなら、世帯ごとの生活空間は完全に分離できるほうが好ましいでしょう。つまり、上述の3つのタイプの中では、完全分離型が賃貸併用型の二世帯住宅に適しています。

電気・ガス・水道は、それぞれの世帯の使用量を個別に測定できるように、別々にメーターを設置するとよいでしょう。ただし、工事費等が増えますので、しっかり予算組みしておきましょう。

なお、各世帯の居住空間は、以下の方法で分けるのが一般的です。

上下で分ける子世帯が上階、親世帯が下階に住むケースが多く、下階は平屋感覚で暮らせる。やや騒音が問題になりやすい。
左右で分ける上下で分離するより騒音問題が起きにくい。親世帯は将来、階段の上り下りが難しくなるかもしれない。


賃貸併用型の二世帯住宅は、これらの注意点を踏まえ、建築会社と綿密な打ち合わせをおこなっていただく必要があります。

住宅ローンはどうなる?


住宅ローンはどうなる?
最初から一世帯分のスペースを賃貸に出すご予定の場合は、注意が必要です。

もしも、融資を受けるのであれば《住宅ローン》を利用できるようにしたいところです。そのためには、自宅部分の床面積を50%以上確保する必要があります。

住宅に使えるローンは、2種類あります。

住宅ローン最長融資期間が長く、金利が低い。自己が居住する住宅用のローンであるため、アパート経営等の賃貸を目的にした住宅には利用できない。
不動産投資ローン少ない自己資金で高額な物件を購入でき、家賃収入でローンの返済ができる。審査では、個人の属性だけでなく物件の収益性も見られる。


住宅ローンには「金利が低い」という大きなメリットがあります。金利が低ければ低いほど、利息が減り、総返済額を軽減できます。

賃貸併用住宅の場合、自宅部分の床面積が全体の50%以上あれば、住宅ローンの利用を承認してくれる金融機関が多いでしょう。承認が得られなければ、賃貸部分は不動産投資ローンを利用することになります。

なお、賃貸併用住宅で住宅ローンを利用する場合は、以下のふたつが重要です。

  • あらかじめ金融機関に賃貸併用であることを知らせておく
  • 複数の金融機関を比較検討する

賃貸併用として利用する予定なら、あらかじめ金融機関に相談しておきましょう。金融機関によっては、賃貸併用住宅の住宅ローンの利用を認めていない場合があります。

承認を得ないまま無理に進めると、賃貸を始めたときに、金融機関から「全額返済してください」と言われるリスクがあります。そうなると、急いで借り換えをしなくてはなりません。

また、契約者の属性が同じでも、金利や審査の承認率は金融機関によって異なります。複数の金融機関を比較検討しながら、よりよい条件の住宅ローンを選ぶことが大切でしょう。

他にも、団体信用生命保険など考慮すべき事項が多数あります。不動産や住宅ローンの専門家と相談しながら、慎重に検討することをおすすめします。


東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、豊富な知識と経験をもとにお客さまの悩みにお応えしております。

二世帯住宅や住宅ローンに関するご不安がございましたら、お気軽にご相談ください。

入居者と良好な関係を築くには?


入居者と良好な関係を築くには?
初めて賃貸経営をされる方にとって、入居者との関係も気になるところでしょう。

日常的なコミュニケーションや大家としての適切な対応が必要なことは、言うまでもありません。それ以外にも、設計段階から入居者のことを考えた住宅設計を実施することが大切です。

たとえば、こんなことを意識しながら設計をおこないたいところです。

  • プライバシーの確保
  • 間取りの配慮
  • 騒音トラブルの回避

もう少し、補足説明をしておきましょう。

▼プライバシーを確保しよう


他人同士が二世帯住宅で暮らすのであれば、プライバシーの確保が必須です。

たとえば、各住戸に独立した玄関を設け、必要以上に生活動線が重ならないようにするほうが無難でしょう。お互いに生活が丸見えにならないように、視線を遮る工夫をしましょう。

▼間取りの使い勝手も考慮しよう


個人邸であれば、個人の好みやライフスタイルに合わせて住宅を設計するでしょう。しかし、賃貸を視野に入れているのであれば、市場のニーズを意識した設計にすることが重要です。

採光や通風を確保しながら、奇をてらわない使いやすい間取りを目差し、収納スペースをじゅうぶんに取る ―― といった配慮が必要です。

賃貸経営は、住まいを提供するだけでなく、入居者との良好な関係を築くための努力も必要です。他人と住む想定で、生じる可能性のあるトラブルにも配慮した設計を心がけましょう。

▼騒音トラブルを避けるために配慮しよう


親族であれば許容できる生活音でも、他人であれば気になるものです。音は建物の躯体を伝わって、さまざまな方向へ広がります。遮音対策を徹底しましょう。

床材に遮音性の高いものを選び、壁や天井にも防音対策を施しましょう。必要に応じて、配水管も防音性の高いものを使用するとよいでしょう。

とは言え、どういう建材やハウスメーカーがよいのか分からないですよね。二世帯住宅の防音対策の疑問点は、ぜひコンシェルジュにご相談ください。お客さまにピッタリのご提案をさせていただきます。

二世帯住宅を賃貸に出すメリットとデメリット

つづいて、二世帯住宅を賃貸に出すメリットとデメリットをご紹介しましょう。両面を把握しておくことで、より賢明な判断ができるようになるでしょう。

まずは、メリットから見ていきましょう。

賃貸併用ならではのメリット


賃貸併用ならではのメリット
賃貸併用型の二世帯住宅のおもなメリットは、以下のとおりです。

  • 住宅ローン返済の負担を軽減できる
  • ライフスタイルの変化に対応できる
  • 老後の生活資金になる

それぞれ、もう少し詳しく解説します。

▼住宅ローン返済の負担を軽減できる


家賃収入で賃貸経営に必要な管理費や諸税などの諸経費分を回収できれば、余剰分はローン返済に充てられます

先述のとおり、住宅ローンを利用できると利息を低く抑えられます。自宅部分については、住宅ローン控除も利用できる可能性があります。うまく設計すると、賃貸経営のキャッシュフローをよくできるでしょう。

また、綿密な収支のシミュレーションも大切です。想定する収入が見込めるかどうか、賃貸経営の専門家に相談することをおすすめします。

▼ライフスタイルの変化に対応できる


あらかじめ賃貸に対応しやすいように設計された住宅は、家族構成の変化に応じて活用方法を変えられます。「自宅 ⇔ 賃貸」の切り替えを、比較的スムーズにできるでしょう。

たとえば、子世帯が将来の親の介護を見据えて二世帯住宅を建てる場合は、親世帯との同居を始めるまで、空いているほうを賃貸に出せます。

親子で二世帯住宅を建てる場合は、親世から子世帯へ相続が発生したあと、空いたほうを賃貸に出せます。ですから、賃貸併用型の二世帯住宅は、将来を見据えた住まい方として注目されています。

▼老後の生活資金になる


住宅ローンの完済後は、家賃収入から経費を引いた分が純利益になり、修繕積立や貯蓄に回せます。貯蓄が増えれば、老後の生活費の強いミカタになってくれるでしょう。

ただし、賃貸経営が成功するかどうかは、立地条件や賃貸需要、建物の維持管理などのさまざまな要素に左右されます。うまくかみ合わないと、空室期間が長くなるリスクもあります。

リスクを減らすには、賃貸需要を見極め、適切な集客と維持管理をおこなう必要があるでしょう。ご不安な方は、不動産会社等の賃貸経営の専門家にご相談ください。失敗リスクを減らせるでしょう。

東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」でも、宅地建物取引士などの資格を持つコンシェルジュが、お客さまのご不安にお応えしています。ぜひ、ご活用ください。

知っておきたいデメリット


知っておきたいデメリット
つづいて、デメリットをご紹介します。賃貸併用型の二世帯住宅のおもなデメリットは、以下のとおりです。

  • 売却しにくい
  • 管理の手間と費用がかかる
  • 入居者とトラブルになる場合がある

それぞれ、詳しく解説しましょう。

▼売却しにくい


賃貸に出すことを想定した二世帯住宅の多くは、完全分離型の間取りを採用されているでしょう。完全分離型の二世帯住宅は、一般的な住宅と比べて売却しにくい場合があります。

売却しづらいおもな理由は、需要が限定されるからです。たとえば、以下のような方しか完全分離型の二世帯住宅に関心を示さないでしょう。

  • 二世帯住宅を探している大家族
  • 片方あるいは両方を賃貸に出したい不動産投資家

また、完全分離型の二世帯住宅は修繕費や固定資産税が高くなりやすく、購入希望者は負担を感じやすいでしょう。買主候補の少なさや維持費の高さは、心に留めておく必要があります。

▼管理の手間と費用がかかる


賃貸住宅の運営には、さまざまな業務が発生します。例をあげてみましょう。

  • 入居者の募集
  • 賃貸契約の締結
  • 家賃の徴収
  • 建物の維持管理
  • トラブル対応

これらの業務をすべて自分でおこなう場合は、 かなりの時間と労力を要します。専門知識が必要となるケースも少なからずあるため、不動産管理会社に委託するオーナーもおられます。

賃貸併用型の二世帯住宅の場合は比較的自分で管理しやすいかもしれませんが、一定の覚悟が要るでしょう。なお、管理会社に委託する場合は、賃貸管理手数料などの費用が発生します。

▼入居者とトラブルになる場合がある


賃貸併用型の二世帯住宅は、収入を得られますが、入居者とトラブルになる可能性もあります。トラブルを避けるには、設計段階からの工夫が必要です。

たとえば「騒音問題、プライバシー問題、設備の故障対応、許可なく内装や外構を改変」などからトラブルになるケースが少なくありません。

起こりうるトラブルを想定して、できる限りリスクを潰しておきましょう。

相続税対策としての二世帯住宅

不動産は、相続税対策に用いられるケースがあります。賃貸併用型の二世帯住宅も、相続税対策として有効なのでしょうか?

賃貸併用型の二世帯住宅は相続対策になる?


賃貸併用型の二世帯住宅は相続対策になる?
賃貸併用型の二世帯住宅も、相続税対策になるケースがあります。ふたつご紹介しましょう。

  • 相続時に土地建物が時価より安く評価される
  • 小規模宅地等の特例を利用できる場合がある

それぞれ補足説明しておきます。

▼相続時に土地と建物が時価より安く評価される


賃貸住宅の土地(貸家建付地と言います)と建物は、相続時の財産評価が時価よりも安く評価されます。このギャップにより、節税効果が期待できます。


建物の相続税評価額建物の貸家(賃貸住宅等)部分は、借家権割合として30%を控除して評価できる
土地の相続税評価額 貸家建付地は、評価額から一定の割合(地域によって異なる)を控除して評価できる


なお、貸家建付地は、原則として土地と建物の所有者が同じであることが要件となっています。

▼小規模宅地等の特例を利用できる場合がある


二世帯住宅を相続する際に、相続税の納税額が大きいとどうなるでしょうか?納税資金を用意できず、家を手放さざるを得なくなる方が出てくるでしょう。

しかしそれでは、同居していた家族は住む家を失い、大変困ったことになります。これを避けるために、被相続人の配偶者や同居家族には減税措置が設けてあります

この特例を《小規模宅地等の特例》と言い、被相続人の居住用あるいは事業用の宅地は一定面積を限度に相続税が80%または50%減額されます。

  • 特定居住用宅地等 ⇒ 330m²を限度に80%減額
  • 貸付事業用宅地等 ⇒ 200m²を限度に50%減額

なお「特定居住用宅地等」と「貸付事業用宅地等」の適用割合は、実相に即して按分されます。

たとえば、賃貸併用住宅の面積割合が《自宅部分50%、賃貸部分50%》の場合は、土地も同様に《自宅部分50%、賃貸部分50%》と見なされます。

ただし、この特例を受けるには、いくつかの条件をクリアする必要があります。たとえば、以下の条件に当てはまる方は、この特例を使えません。

  • 所有権が区分登記されている場合
  • 被相続人と別居している相続人が、持ち家に居住している場合

小規模宅地等の特例は、要件が厳しく複雑です。相続対策としてちゃんと機能させるためには、賃貸併用住宅に関する知識を深めることが重要です。

ご不安な場合は、税理士等の専門家にアドバイスを求めましょう。

賃貸併用の二世帯住宅で相続の対策をする際の注意点


賃貸併用の二世帯住宅で相続の対策をする際の注意点
最後に、賃貸併用型の二世帯住宅で相続対策をする際の注意点をご紹介します。登記について、よくご検討ください。登記は、税制や相続にまで影響します。

建物や土地の所有権は、出資比率に応じて決まり、登記により登録されます。二世帯住宅の登記の方法は、3つあります。

単有登記住宅や土地の取得費を誰かひとりが100%出資した場合、単独登記して単独所有とする
共有登記複数人が出資して住宅や土地を取得した場合は、その出資比率に応じて持ち分割合を決定する
区分登記完全分離型の二世帯住宅のみ可能で、家を2戸の住宅と見なし、親子が個別に登記をおこなう


区分登記にすると、不動産取得税や固定資産税の軽減措置を親子それぞれが受けられ、節税効果が高くなります。しかし、先述のとおり小規模宅地等の特例を利用できなくなります。

まとめ:土地や実家の活用で悩んでいる方はコンシェルジュにご相談ください

本稿では二世帯住宅の賃貸活用におけるポイントや、メリットとデメリットをご紹介しました。

賃貸併用型の二世帯住宅は、比較的容易に自宅にしたり賃貸に出したりできるため、臨機応変に対応できる住まい方として注目されています。

ただし、一般的な住宅に比べて設計や住宅ローン、相続への対応が複雑です。おひとりで悩まず、専門家にアドバイスを求めていただくほうが、よりよい結果につながるでしょう。

東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」は、提携する専門家と一緒に、賃貸併用型の二世帯住宅に関するお悩み解決のお手伝いをしております。

お困りごとやご不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。

リフォームすることでより賃貸活用がしやすくなる場合もあるため、コンシェルジュまでご相談ください。