近年、住まいに和室をもうけることが少なくなり、畳にふれる機会も減ってきていますね。実は、畳には住まう方にとって快適な住環境を作り出す様々な効能・性能があります。今回は、そんな畳についてのお話です。
畳の歴史をひもとく
日本では、縄文・弥生時代から、稲わらを敷き詰めて暮らしていた形跡があります。
飛鳥時代には、菅畳(すがだたみ。スゲで編んだ敷物のこと)という言葉がすでに使われていました。畳という文字は、「こも」や「葦」を「たたむ」ところから来ていると言われていますので、その当時すでに茣蓙(ゴザ)の様なものを敷いて、人々が暮らし始めていたことが想像できます。奈良・平安時代に入ると、現在の畳床と同様の「こも」(稲ワラ)を使った厚みのある畳が作られるようになります。デザインの面でも、縁ありや縁無しなどの畳が作られ、部屋の格式や住まう人の位(くらい)に合わせた敷き方、使い分けをしていたそうです。時代を経て徐々に普及し、江戸時代後期には広く庶民にも使われ、現在に至っています。
日本の気候風土の中で、長く愛されてきた床素材の一つと言えるでしょう。
畳表・畳床について
畳床の伝統的な素材は稲ワラで、積み上げると40㎝の高さになるものを、5㎝まで圧縮して1枚の畳床を作ります。それも単に重ねるのではなく、下に裏(稲ワラ)やシートを配し、その上に薄く厚く様々に向きを変えて重ね、縦横の5~6層構造に仕上げていきます。ムラのない平らな畳床の制作は、畳職人の技術次第といったところがあります。畳床は畳のよしあしを左右する重要な部分であり、保湿性や弾力性、通気性、吸音効果などの畳の性能面で大事な働きをしています。
畳表に使われるイグサの吸放湿性等による爽やかな感触、色調、光沢、縦目筋などの美感覚と、畳床の機能がうまく組み合わされて、優れた床材となるのです。
畳は、あまり古くなると湿気やホコリによって機能を損ねますので、これを防ぐ為に畳干しや畳表替えを行い、風や陽に当てるなどして、機能回復を図ります。
最近では、日焼けしない、あるいは防虫・防湿機能の高い化学素材を使った畳床建材の需要が増えており、その機能特性に着目して、床建材を選ばれることもあります。
畳の効能
■吸湿・放湿効果
畳床は、よく乾燥させた稲ワラを、程良く圧縮したものですが、内部のワラは空気を含んだ状態になっており、ここに室内の湿気を吸い込んで、湿度を下げてくれます。
畳1枚は、最大で約500ccの水分を吸収します。梅雨時など湿気の多い季節は水分を吸収し、逆に室内が乾燥してくると蓄えた適度な水分を放出するという調湿作用を備えています。 しかし、その畳も古くなると、吸湿効果を失ってしまいますし、時には畳に風を通すことが必要です。
■保湿・断熱効果
イグサは直径1.5mmくらいの細い草ですが、その断面はスポンジ状になっています。また、ワラの場合は、中がストローのような空洞になっています。イグサもワラも中に空洞があって弾力をもっており、空気を多く含んで熱を遮断する断熱効果をもたらします。
冬は、室内の温かい気温を外へ逃がさず、夏は、高温になる外気の侵入を防ぐ働きをします。
■吸音効果
上記の通り、畳床はワラを縦横に配して40cmくらい積み上げたものを5cmほどに圧縮してつくるため、畳には弾力があり、吸音効果を発揮し、音の振動をやわらげます。
例えば、隣や上下階の部屋がフローリングですと、衝撃音が響きやすいのですが、畳の部屋の場合は音を吸収してくれるため、響きが少なくなります。またテレビ・ステレオなどの音響製品の音も、畳が和らげてくれます。
現在は、ワラを全く使用しない畳床(化学畳床)が普及し主流になりつつありますが、ワラ床と同様の効果がある商品もでています。
■鎮静・洗浄効果
イグサやワラの畳表は、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドや二酸化窒素を吸着するなど、空気を浄化してくれます。畳が知らないうちに室内の環境浄化に役立ち、消臭効果もあり、天然の空気清浄機の機能を果たします。
また、畳の部屋は、イグサがかもしだす香りで、疲れた体を癒し、心を静めてくれ、森林浴と同様な効果を与えてくれます。イグサの香りは集中力の持続を促すとされており、畳のある空間は、勉強部屋として利用することにより、高い学習効果も期待できます。
以上、畳の歴史やその効能についてのご紹介をさせていただきました。
和室や畳コーナーなどを上手に暮らしに取り入れて、我が家で素敵な「和の時間」を過ごしてみませんか。