路線価は毎年7月1日に国税庁より公示されます。これは土地等を評価する際に使用されるもので、同地点の路線価を過去と比較することで、その土地の動向を窺い知ることができます。今回発表された2019年と4年前の2015年を比較し、沿線の動向を探ってみましょう。
なお、データ抽出条件は以下の通りです。各駅前の5路線(道路)を商業地・住宅地の区別はせずに抽出しています。なお、それぞれの抽出比率は駅により異なります。商業地と住宅地は一般的に商業地の値が大きくなりますので、数値の大きい駅は駅前に商業施設が多く存在する傾向にあり、数値の小さい駅は駅徒歩圏内に多くの住宅街が存在する傾向にあると言えます。
第1回は田園都市線、第2回は東横線を探り、第3回は大井町線を探ります。
大井町線の歴史
まず、簡単に大井町線の歴史についてご紹介します。
大井町線の歴史は古く、1929年(昭和4年)12月に大井町線(大井町~二子玉川線全線)が開通しています。1943年(昭和18年)7月大井町線が溝の口まで乗り入れを開始、1963年10月11日(昭和38年)に大井町線は田園都市線に名称変更し、1979年(昭和54年)8月田園都市線、新玉川線、半蔵門線の終日相互直通運転開始に伴い、二子玉川園(現:二子玉川)~大井町間を再び大井町線としました。2000年(平成12年)8月 二子玉川園駅を二子玉川駅に駅名を変更しました。2009年(平成21年)7月11日大井町線が溝の口駅まで延伸し現在の路線となりました。最近では有料座席指定サービス「Q SEAT」も開始され、利便性が向上しています。
画像/大井町駅 1928年
画像/二子玉川園開園飾付 大井町線二子玉川駅 1954年
2019年と2015年の路線価《上昇率》
2015年と2019年の路線価を比較し、上昇率をグラフ化したものが下記です。
全駅でプラスの上昇率となっており、大井町線の安定した人気が窺えます。
一番上昇率の大きい二子玉川駅は田園都市線のコラムをご覧ください
次に上昇率の高いのは自由が丘駅です。東横線と大井町線が乗り入れ、両路線の乗換駅として多くの人が利用しています。大井町線が溝の口駅まで延伸し、田園都市線や南武線から溝の口始発の大井町線の乗換利用客が増え、乗降客数も2009年以降増加が続いています。
現在、自由が丘駅周辺地区では都市再生整備計画として地域の活性化と区域内の建物の耐震化など防災性の向上を目的とした再開発の動きが活発です。現在は正面口の駅前ロータリーを中心に道路の拡幅計画が進められています。道路拡幅を見越して9mのセットバックを行い、低層ビルから9階建てへと生まれ変わるなど駅前の風景も変わりつつあります。
駅前の東地区、西地区(自由が丘1-29地区を含む)も再開発に向けた動きがありますので今後も注目です。
次に広域になりますが、旗の台駅~大井町駅は6駅中5駅が20%を超える上昇率です。東急線全駅の上昇率の平均が14.3%ですから、このエリアは広域で高い上昇率を記録したことが分かります。
旗の台駅~大井町駅周辺は品川区の荏原地区と呼ばれ、このエリアでは老朽住宅の建替えや共同化、道路の拡幅、広場が設けられるなど災害への対策と共に街が生まれ変わりつつあり注目を集めています。なお、品川区は令和2年度までを不燃化特区の整備プログラムの事業期間と定め事業に取り組んでいます。
画像/自由が丘駅 正面口 2013年
撮影 新建築社
2019年と2015年の路線価《最大値》
次に、各駅の路線価の最大値について探ります。
最も路線価格の大きいのは自由が丘駅です。第2位は二子玉川駅で両駅とも上昇率でも上位に入った駅です。
路線価格3位の大井町駅は駅周辺の再開発が活発です。2018年に旧JR広町社宅跡地に複合スポーツエンターテイメント施設がオープンしました。期間限定で2021年(予定)までの営業と発表されており、今からその後も気になるところです。また再開発の一環として、2019年に竣工した世帯数600を超える高層マンション建設はもちろん、羽田に近いことからビジネスホテルの立地が進んでいます。
画像/大井町駅(JR線)
画像/大井町線の有料座席指定サービス「Q SEAT」の運行開始 2018年
次回は目黒線について探ります。