路線価は毎年7月1日に国税庁より公示されます。これは土地等を評価する際に使用されるもので、同地点の路線価を過去と比較することで、その土地の動向を窺い知ることができます。今回発表された2019年と4年前の2015年を比較し、沿線の動向を探ってみましょう。
なお、データ抽出条件は以下の通りです。各駅前の5路線(道路)を商業地・住宅地の区別はせずに抽出しています。なお、それぞれの抽出比率は駅により異なります。商業地と住宅地は一般的に商業地の値が大きくなりますので、数値の大きい駅は駅前に商業施設が多く存在する傾向にあり、数値の小さい駅は駅徒歩圏内に多くの住宅街が存在する傾向にあると言えます。
前回は田園都市線を取り上げました。今回は渋谷と横浜をつなぐ東横線を取り上げます。
東横線の歴史
まず、簡単に東横線の歴史についてご紹介します。
1932年に渋谷~桜木町間が全線開通します。その後1964年に日比谷線との直通運転が開始されます。2004年には横浜駅~桜木町駅の営業を終了、みなとみらい線との直通運転を開始。2013年渋谷駅~代官山駅の地下化に伴い、渋谷駅が移転、副都心線との直通運転が開始され、現在に至ります。
画像/ 工事に着手した神奈川線・丸子多摩川附近 1923年
画像/祐天寺駅ー学芸大学駅 1970年
2019年と2015年の路線価《上昇率》
2015年と2019年の路線価を比較し、上昇率をグラフ化したものが下記です。横浜駅のみマイナスですが、他駅はプラスの上昇率となっています。上位3駅は40%を超しており、大幅な上昇といえます。
一番数値の大きい代官山、次点の渋谷をまとめて探っていきましょう。
2015年に「LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)」がオープン、2016年には隣駅の中目黒駅から代官山駅側にかけて「中目黒高架下」がオープンし飲食店を中心にさまざまな業種の店舗が日々賑わいを見せています。また、2018年には渋谷駅南側のエリアに「渋谷ストリーム」「渋谷ブリッジ」が開業しました。先日「渋谷スクランブルスクエア」も開業し、渋谷を中心としたエリアの開発が続いており引き続き注目の街と言えます。
3番目に上昇率が高いのは武蔵小杉駅です。2008年から始まったタワーマンションの建設
ですが(川崎市HP「小杉駅周辺地区の開発概要等」に記載物件)引き続き現在もタワーマンションの建設が続いています。2018年、2019年に竣工したタワーマンション、2021年に竣工を控えているタワーマンションはいずれも商業施設を備えており、今後より一層街の賑わいに華を添えるものとなりそうです。
画像/LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)
画像/工事中の「スクランブルスクエア 東棟」2018年
画像/タワーマンション建設の進む武蔵小杉 2013年
撮影 新建築社
2019年と2015年の路線価《最大値》
次に、各駅の路線価の最大値について探ります。
最も値の大きいのは渋谷駅で2位の横浜駅に2.5倍以上の差をつけての1位です。2位の横浜駅も3位の自由が丘駅の約2倍になっており、上位3駅もそれぞれに隔たりがあることが分かります。また8駅が100万円/㎡を超えており、東急線の中でも商業地が多い路線であることが伺えます。大きな商業施設はないものの、祐天寺、学芸大学、都立大学、田園調布、元住吉、日吉などは100万円/㎡前後の値になっており、駅前の商業地域の賑わいや住宅街としての安定した人気の高さが理由と考えられます。
今後は、相鉄・東急直通線が2022年に開業予定です。相鉄・JR直通線の羽沢横浜国大駅から新横浜を経由し、東急東横線・目黒線日吉駅までの区間に連絡線が整備されます。それに伴い、綱島駅周辺の再開発や日吉駅周辺の整備も進んでいます。2020年開業予定の横浜駅のタワービルの開業など、今後も東横線の動向に注目です。
画像/東横線5000系 2010年
次回は大井町線について探ります。